三百年の謎匣

秋の夜長は読書とブログ時を越えてめくるめく謎

三百年の謎匣 (角川文庫)

三百年の謎匣 (角川文庫)

弁護士・森江春策の元に訪れた資産家・玖珂沼氏の依頼は、ごくありきたりな遺産の分配に係わる遺言状の作成。
それとは別に、依頼人から手渡されたのが一冊の旧くて黒い装丁の本だった。
そして森江の事務所を辞した依頼人は、その直後に奇妙な状況で殺害されてしまった。
喫茶店で時間を潰していた森江の助手・新島ともかが他の客たちと一緒に、何もない袋小路へ入っていく依頼人を目撃。
しかし、なかなか出てこないので、ともかが様子を見に行ってみると、拳銃で撃たれて死んでいる依頼人を発見する。
しかし、現場には犯人どころか、確かに現場へ入っていったはずの依頼人の足跡さえ残されていなかった。
しかも警察の調べでは、依頼人は至近距離から射殺されたという事実が明らかになり、事態は混迷を極める。
そして森江の元に残された黒い本には、筆者も時代もばらばらな6つの手記が記されていた。
1.18世紀初頭、奇妙な東洋の国でガリヴァー氏が体験した、ある男の復讐譚。
彼はどうやって宴会の席と復讐の現場を行き来出来たのか?
2.18世紀中頃、海賊船の船医が語る、ベンガルの姫君を巡る海賊たちとイギリス海軍&東インド会社との騙し合い。
彼は何故、海賊船と友軍の船を間違えたのか?
3.18世紀末、あるイギリス人の青年がフランスでの友人の仇を中国でとる話。
彼は何故、急に乱心したのか?
4.19世紀後半、アフリカの奥地に存在するという謎の王国を求めて旅する冒険譚。
突如、密室に現れては消えた鎧騎士のトリックとは?
5.19世紀末、西部の町で起きた銃撃戦と、あらぬ罪を着せられた新聞社の社長を救うため法廷に現れた名探偵の話。
真犯人はいかにして自殺行為に走らされたのか?
6.20世紀の第二次世界大戦直前頃、飛行船ヒンデンブルグの中で起きた殺人事件。
彼らはいかにして絶体絶命のピンチから生き残ったのか?
これらの手記には共通して、あえて明らかにされていない謎が1つずつ残されていて、最後に森江がその謎を解くと共に、現在進行形で起きている事件も解決するという、非常に珍しい構成の本。
実は森江春策シリーズは初めてというか、シリーズものということすら知らずに読みました。
舞台が大阪ということで、主人公の森江さんの大阪弁がちょっと違和感がありましたが、中にはさまれる6つの物語は、まさしく目眩をおぼえそうなくらい、めまぐるしく時代も舞台も飛びます。
どれも短編にしておくのが惜しいくらいで、それぞれの登場人物のその後とかも気になります。
ただ、読んでいる最中、あえて謎解きをしないまま次の物語へ行ってしまうのが辛いですね。
たぶん最後に森江さんが謎を解いてくれると、ついつい最後の章を先に読みたくなってしまいます。
そして、事件解決後に明かされる黒い本に隠された最後の謎。
最後まで気を抜けません。